さて、今週からネタバレ有で「時代」に向き合ってみたいと思います。
まず取り上げるのは、新規作画で遂に公式映像化された第一次・第二次火星沖海戦!!・・・・・・・ではなく更にその前、第二次世界大戦終結200周年式典と内惑星戦争についてです(笑)
このあたりの新情報も噛めば噛むほど味が出る感じで面白いんですよね。
では早速いってみましょう。
まずは気になった点を順に挙げてみました。
1)宇宙戦艦ヤマト建造時の偽装ベースとなったのは、1945年に沈没した戦艦大和ではなく、第二次世界大戦終結200年祭で復元された戦艦大和だった。
2)火星との内惑星戦争は2164年(第一次)と2183年(第二次)に勃発した。
3)火星側は漂着した異星文明の戦闘用宇宙船を入手していた
4)(少なくとも第一次内惑星戦争時は)火星自治政府宇宙海軍の方が技術的に進んだ艦艇を用いていた。
5)2168年に国連宇宙海軍が創設され、その主力となる村雨型は2170年、金剛型が2171年にそれぞれ就役を開始した。
6)2191年のガミラスとの初遭遇時、それを探知したのは天王星ステーションだったが、砲火を交えることになったのは冥王星沖だった。
一旦ここまでにしましょう。
まず1)の第二次世界大戦終結200周年式典について。
映像本編とパンフレットの記載によると、戦艦大和は2141年に坊ノ岬沖から引き上げられて修復・復元され、2145年の式典での慰霊・鎮魂の後、再び海に帰されたとあります。
なるほど、この設定であれば、坊ノ岬沖で沈んでいる大和の状態からは「夕日に眠るヤマト」の姿は成立しないという旧作以来の指摘への回答になりますね。
また、2199公開当時、リメイク版ヤマトはオリジナル版のように戦艦大和から改造されたものではなく、一から新造された艦である(大和からヤマトに受け継がれたものはない)という点について、残念だというファンの声があったとも記憶しています。
また、お手伝いした「アクエリアス・アルゴリズム」の打合せでも、復活篇ヤマトがそれ以前のヤマト/大和から引き継いでいるものがあるのかどうかという点について、かなりの時間をかけて議論したことを覚えています。
その点、「時代」制作陣は「ヤマト」が「大和」を受け継いだ存在であるという点を非常に重要視された上で、このアンサーを用意されたのだと思いました。
また、せっかく復元した大和をなぜ再び沈めてしまうのかという点に疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれませんが、鎮魂と慰霊のために大和を引き上げて復元した以上、その後は再び海に帰すという決定が下された事は理解できない話ではないと思います。
もちろん、貴重な歴史遺産、文化遺産として人々が目にすることができる形で保存したいという声も多数あったとは思いますが、そこで海に帰すという選択ができるのが200年間世界大戦を起こさずに過ごした22世紀の地球人のメンタリティーなのではないでしょうか。
そこからすれば、リメイク版の宇宙戦艦ヤマトが全ての使命を終えて退役する時にも、再び鎮魂と慰霊の後、海底に戻される気がしますね。
続いて2)~5)の内惑星戦争です。
予告の時点で火星側が異星文明のオーパーツを入手したことが示唆されていましたが、宇宙艦艇技術で火星が地球よりが遥かに進んでいたとはっきり明言されたのには驚きました。
しかしそれならば、某ジ○ン公国ばりに火星が独立戦争を決意することもあるでしょうでしょうし、少なくとも為政者が決断を下すにあたっての重要なファクターにはなったでしょう。
ここから先は、特に想像の飛躍がひどくなりますが――
開戦にあたり、火星自治政府も地球との圧倒的な国力差や人口差を理解していたでしょうから、優れた宇宙艦艇戦力を以って短期決戦で地球を屈服、あるいは大幅な外交上の譲歩を引き出そうと考えたのではないでしょうか。
そして戦いの経過ですが、緒戦こそ優れた軍事技術や国力差に驕る地球側の油断(この油断には火星がボ○ー艦を入手したことを知らない、あるいは知っていても重要視していないという点も含まれます)もあって火星側が大きな戦術的勝利を得るも、それを戦略的優位にまでは持ち込めなかったと考えるのが妥当の気がします。
まるで太平洋戦争みたいですが、体力(国力)の違い過ぎる二勢力間の戦争の典型と言ってもいいと思います。
火星軍は優れた兵器により戦場での優位(戦術的優位)を獲得しつつも地球を直接占領できるほどの量的戦力には欠け、逆に地球軍は火星圏に侵攻して火星軍を撃滅できるだけの質的戦力を用意できず、戦争は千日手の長期戦に陥った――という絵面が浮かんできます。
そうなると、22世紀のグローバル化は現在よりも更に前進することはあっても後退することはないでしょうから、自勢力圏だけで経済活動を維持しなければならない状況が続くと、経済規模の小さい火星側が先に国力面で苦しくなってきます。
結果、どこかのタイミングで講和が図られ、(第一次)内惑星戦争は終結します。
形としては火星の判定勝利、かなりの自治権拡大が認められたくらいが落としどころの気がします。
戦争期間は明らかにされてはいませんが、短ければ数ヶ月、どれだけ長くても3年以内でしょうか。
こうして(殆どが手前勝手の想像ですがw)宇宙植民開始後初の大規模戦争は終結しました。
しかしそれは単なる戦間期の始まりに過ぎず、特に勝って当たり前と思っていたのに勝てなかった地球側に猛烈な復仇心或いは危機感を植えつけることになりそうです。
その後、年表から地球側が行った事として読み取れるのは二つ、常設軍事組織としての「国連宇宙海軍」の設立及び新型艦艇の開発と量産です。
まず前者について。
おそらく地球側は第一次内惑星戦争を各国混成の国連軍あるいは多国籍軍として戦ったのだと思います。
湾岸戦争の時のような圧倒的な勝ち戦なら、指揮権の統一が不十分でも各国軍の方向性は概ね一致するので問題は生じにくいですが、第一次内惑星戦争はむしろ劣勢な戦いですから、各国間のエゴや駆け引きもあって、一層非効率で統一の取れない戦力運用を強いられたのではないかと想像します。
その反省から、戦後数年を経て、ようやく強固な指揮命令系統を構築することができたのだと思いますが、これを可能としたのも、先ほども述べた「勝てなかった」ことに対する危機感だったと思います。
もし第一次内惑星戦争で地球があっさり勝利したのなら、国連加盟各国のエゴを抑えて地球丸ごとの抜本的な軍事制度改革なんてまとまる訳がないですから。
何にせよ、国連宇宙海軍の創設は下手な新型兵器導入よりもよほど地球軍事力の能力を高める事になったと思います。
どれほど強力な兵器が配備されたとしても、それを統一された指揮命令系統下で整然と運用できなれば、集団としての戦力倍増効果は発揮しきれませんからね。
そして後者。
地球側は戦争中から続けていた先端技術開発を更に加速すると共にその成果物の量産に血道を上げ、火星側唯一のアドバンテージだった宇宙艦艇技術の優位を徐々に打ち崩し始めます。
その象徴が村雨型、金剛型の就役でしょう。
地球側軍事技術の底上げは、自力での努力以上に戦場で回収した火星側の兵器の分析と模倣が効果を上げそうですね。
村雨型の艦橋構造物の形状が火星の戦闘艦艇に酷似している点は、まさにその表出のように思えます。
対する火星側も、こうした地球側の努力(復仇の念)に気づかない筈がありません。
彼らも彼らなりに全力で新技術開発と戦力増強に努めるでしょう。
そうした両国の軍備競争もあって外交関係が悪化し、再び戦端が開かれたのだと思いますが、その状況は色々と考えられますね。
軍事的な優位(逆転)を確信した地球側が「カルタゴ滅ぶべし」的に外交・経済的に火星を締め上げ、火星側の暴発を誘う――というような状況や、逆に将来の軍事的劣勢を恐れた火星側が「今ならまだ勝てる」と先手を打って――という状況、更には第一次戦では得られなかった完全独立を今度こそ――というような状況まで、本当に色々と考えられます。
ただ何にせよ、この時点ではまだ同数兵力であれば火星側の方が宇宙艦艇技術の面では優勢の気がします。
先端軍事技術の後追いは、昔の日本や現在の中国を見ても分りますが、模倣を交えることで追いすがるところまでは比較的容易でも、追い越すのは非常に難しいからです。
しかし、火星側の軍事的・技術的優位は地球側の努力によって前戦争時ほどではなくなっていますし、物量では地球側が圧倒的に上。
火星側も善戦し、度々地球側を苦しめるも、最終的には地球側の大戦力に押し潰されるような格好で敗れたんじゃないかと想像しています。
「時代」での言及はありませんでしたが、2199本編では戦後火星から強制移住が行われたと語られていました。
これは現代の視点から考えても非常に手荒な戦後処理であり、当時の地球でも異論や反論は出たと思います。
ですが、2199の設定では火星が地球に隕石落としの攻撃をかけたという設定があったと記憶しており(ソースが確認できないのですが・・・)、その攻撃で地球市民に大きな被害が出たのなら、火星に対する市民レベルでの懲罰感情は非常に強くなるでしょう。
また、オーパーツを用いた火星の高い科学技術力に対する国連や各国政府、各国軍首脳レベルが感じていた脅威の大きさも、市民感情以上に強制移住断行の要因になりそうです。
戦後、国連や各国から派遣された調査団が、それこそ火星中の土地を掘り返す勢いで異星文明の宇宙船を血眼で探したのでしょうが――結局は見つからなかったのでしょうね。
ガミラス戦時の波動エンジン開発を担い、おそらく地球が有する殆どの技術的トップシークレットに触れることができたであろう真田さんがそう証言しているので、見つからなかったのは事実だと思います。
ただそうなると、地球側は決して小さくはない不安を覚えるでしょう。
もしかしたら火星政府・軍の残党が、異星文明の宇宙船を修復して国連宇宙海軍の進駐前に太陽系外に脱出したんじゃないか。そしていつか、異星文明を引き連れて再び太陽系に戻って来るんじゃないか――と。
それが6)のガミラスとの初遭遇時の地球側アクションにも影響を与えていたような気がします。
つまり、地球は火星独立勢力の残党と異星文明を恐れて太陽系外縁に警戒網を敷き、実戦部隊である国連宇宙海軍も比較的高いレベルでの即応体制を維持していたのだと思います。
未だ第二次内惑星戦争終結から10年も経過しておらず、「簡単に火がつく」状態だった太陽系に拡大政策中のガミラスがタイミングよくやってくるなんて、本当に間が悪い・・・・・・。
あるいは、このタイミングと状況の連なりがなければ、たとえば第二次内惑星戦争の50年後とかなら、遭遇直後の先制攻撃まではなかったんじゃないかと思ってしまいますね(それがその後の地球にとって良かったかどうかは分かりませんが)。
随分長くなってしまいましたが、最後にあと二つだけ。
一つは、火星自治政府側の戦闘艦艇について。
艦級名も明らかではない火星艦艇(個人的には、オリンポス級とか推したいですけど)のバックショット、特に補助エンジンのX字型の配置がアンドロメダ級を連想させるなぁ・・・・・・と思っていて思い出したことが。
2202で公開されたアンドロメダ級のスペックに書かれていた補機「ケルビンインパルスエンジン」。
これ、私の中でずっと謎の存在だったのですが、実は火星式の星間航行機関だったんじゃないか?と思ったり。
2202終盤の展開からすると、アンドロメダやD級の設計も時間断層AIが行っていた可能性が高そうなので、AIならば空気を読んだり忖度などせずに、性能的優位だけでデータバンク内にあった火星式の機関すら採用してしまう気がしまして。
逆に、改装後もヤマト搭載補機が艦本式コスモタービン系なのは、AIではなく人間が設計しているからでは、とか。
ええ、はい、全て妄想ですw
妄想ついでにもう一つ。
第二次内惑星戦争末期から戦後すぐにかけては、地球・火星双方に様々な戦場伝説が生まれてそうだなぁとも思いました。
火星軍が不利な戦況を逆転すべく、極秘裏に超巨大宇宙戦艦を建造している・・・とか、いやもう実際に配備されていて、一週間前に消息を絶った○○○戦隊は、それにやられたらしい・・・とか、技術レベルに勝る敵に対する地球側の恐れと戦局の逆転を願う火星側の願望が絡み合うことで、様々なフー・ファイターを戦場のあちこちに生み出しそうな気がしますね。
このあたりを上手く使えば面白い二次作品も作れそうです。
うーん、さすがに古代守は絡められませんけど、立ち位置や艦名の点で言えば、ア○カ○ィア号ネタとかすごく使いやすいですよねw
『「宇宙戦艦ヤマト」という時代』は総集編とは言いながら、本当に考えて考えて考え抜いて作り込まれた魅力が光る作品だと思います。
まだまだ観返す度に、新たな面白さが発見できそうです。
次回は、第一次・第二次火星沖について取り上げた記事を書いてみたいと思います。
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